コラム

続・シャープ、減資に見る大企業と中小企業の税務

お待たせいたしました。シャープ減資の税務上の効果のお話の続きです。

前回記事はコチラ→シャープ、減資に見る大企業と中小企業の税務

この記事書いてから、このHPへの訪問者が爆発的に増えました。自分としても、税金の話はどうも分かりにくいし、勝手にテーマを決めてズラズラ書いても関心のないことだったら読んでいただけないし、であんな風にup to dateな話題を取り上げ記事に出来たら良いなぁと思っていたところ。しかし記事にしたい話題が飛び込んできても業務に追われなかなか書くのが追い付かないのがね~…。この続編も大幅に遅れてしまい、時機を逃した感ありますが、お付き合いくださいませ。

さて、先月6月23日にシャープの定時株主総会が行われ、そこで5億円まで大幅減資することが承認された。個人的には当初報道された1億円まで減資して中小企業化!が行われたら市場等はどんな反応を見せるか見てみたかったのでこの結果はちょっと残念。ちなみにこの5億円という数字も意味ある数字になる。それは後半で説明。

中小企業化、実現しなかったが、実現してたらどのように違ったのか。前回の外形標準課税の話に続き、繰越欠損金の制限の話をさせていただこう。会計上の利益というのは毎期毎期単年度で計算するが、税務上の所得計算では赤字を繰り越し翌年以降の黒字から控除することができる。例えば27年度の所得が△1,000万円でした。28年度の所得は繰越控除前で1,000万円出ました。28年度の税金を納める際の計算は1,000万円-1,000万円=0円。28年度も税金はかからないよ、ということになる。当然企業にとっては有利なとてもありがたい制度。この繰越欠損金は現行では9年間繰り越せることになっている(27年度税制改正で10年へ延長)が、7年から9年に延長された23年度税制改正の際、同時にある重大な改正も行われた。その改正は、控除限度額について、その繰越控除をする事業年度の繰越控除前の所得の金額の100分の80相当額とすることとする、というもの。文章にすると分かりづらいので先ほどの例で説明すると、改正前は税金は0だが、改正後は控除できる金額は1,000万円×80%=800万円ということになり、1,000万円-800万円=200万円。200万円に対して税金がかかってくるということになる。これってすごいインパクトじゃない? そして、ここがキモなんだけど、80%の制限があるのは資本金1億円超の大法人のみで、1億円以内の中小法人は今までどおり100%控除できちゃう。大法人に限り、過去にどんなに巨額赤字を出していても、儲かった年があれば一定の税金を払わなければならない。そんなふうに改正されたのだ。しかも!27年度の税制改正でこの80%の制限が27年度以降65%、29年度以降50%とさらに強化されることなってしまった。もちろん対象は大法人のみ。中小法人は変わらず100%控除である。

シャープの2015年3月期の連結決算の最終赤字は2000億円を超えている。会計上の利益と税務上の所得は特に大法人においてはすさまじく乖離するので2000億円がそのまま繰越欠損金となるわけではないが、そうであっても巨額の欠損金が累積されているはず。それなのにもし27年度において少しでも所得が発生したら税金を納めなければならない。例えば1億円の所得を計上すれば1億円-(1億円×65%)=3500万円に対して税金を納めなければならないのだ。

税務上の大法人/中小法人の区分は資本金のみ。1億円超か以内か。それだけ。他の要素は一切考慮されない。こうなると資本金を1億円以内に減資して中小法人の優遇規定を受けたいと思う企業が出てきても不思議ではないし、我々税理士としても減資することで優遇規定が受けられるから検討してみてはどうかくらいの助言はしておかねば、税賠の対象にもなりかねない。税金のことを考えて資本金を設定する。税務の現場では当たり前すぎることだ。法律に従って合法的に節税を行う。節税だって経営のひとつでしょう。なんか悪いことありますか?しかし、シャープ、中小企業化か??の報道がされてから、各方面から批判があったようで結果的には5億円へ落ち着いた。んで、なんで5億円か?ということだが、資本金が5億円以上になると税制上の優遇が全くなくなるのだ。シャープには100%子会社が数社あるようだが、資本金5億円以上の会社の100%子会社については、その子会社自体の資本金が1億円以下であってもその子会社は中小法人の優遇規定を受けられない。つまり経済的にほぼ一体とみられる100%子会社も優遇規定が受けられない数字に資本金を設定することで周囲の批判をかわしつつ、前回記事で取り上げた外形標準の資本割を最も圧縮できるギリギリが5億円ということなのだ。おそらくそういうことなんだろうと思う。まあ、裏では色々あったんでしょう。巨大企業の社会的責任?とやらも大変だねー、と実感した5億円という着地点でございました。

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